高還元SESで待機になったときの給与条件には主に3つのパターンがあります。
パターン1 月給が減る
さらに2パターンに分かれ
①休業扱いとし待機期間中は平均賃金の6割を支給する
②基本給のみ支給する
会社によって方法、減少額が異なりますが月給が減るという点では同じです。
パターン2 賞与が減る
待機になっても月給は減りませんが待機期間中の給与などを賞与から減らします。
賞与を粗利率(【1-(給与+社会保険料+交通費)÷売上】)から決定すると書かれている会社がこのパターンです。
パターン3 給与0円
有期雇用契約の場合です。待機=契約終了に伴い雇用契約が終了となり収入は0円となります。
パターン4 給与そのまま
待機になっても月給はそのまま。理想的ではあるが還元率は少し控えめなところが多い。なので高還元SESの待機パターンとしては除外。パターン2の会社が”待機時月額保証”をうたっているため”本当に給与そのままなのか?”と疑いがかけられるかわいそうなパターン。
待機なし、1か月待機、2か月待機したときのシミュレート
単価60万、還元率70%とし、待機なし、1か月待機、2か月待機したときの収入例を見ていきましょう。給与条件と計算は以下の通りです(社保は月給の14%として計算)。
パターン1 月給が減る
[給与条件]
月給:単価×0.7
賞与なし
待機時は休業扱いとして平均賃金の6割を支払う
(細かい計算方法は省きますが平均賃金の6割≒[月給×0.4]になります)
[収入例]
月給:42万
待機時
月給:16.8万
パターン2 賞与が減る
[給与条件]
月給:単価×0.58
賞与:単価×0.12×12か月
待機があった場合待機期間中の月給、会社負担分の社保を賞与から減額する
[収入例]
月給:34.8万
賞与:86.4万
待機時
月給:34.8万(減額なし)
賞与:待機期間に応じて減額
パターン3 給与0円
[給与条件]
月給:単価×0.7
賞与なし
案件終了で雇用契約は解除となる
[収入例]
月給:42万
待機時
月給:0万
上の表は待機なしと、11、12月に待機のあった場合の収入をまとめたものです。待機なしの場合単価、還元率は同じなので年収は全て同じになります。
待機時は 月給が減る>給与0円>賞与が減る の順に年収がいいことがわかります。
「月給が減る」パターンが待機時の収入が一番高い理由
待機費用は会社負担
月給がガクッと減るため印象は悪いですが、実のところ3パターンの内減少幅は一番小さいです。
正社員のとき休職以外で社員の給与を0円にすることはまず無理です。つまり待機になったとしても給与の支払いが発生します。稼働時は社員の取り分(単価の70%)は毎月支払われているので待機となった場合の費用は会社のこれまでの取り分から捻出することになります。売上0円に対して給与が支払われているので額自体は少なくなっていますが社員は全く損していません。
「賞与が減る」パターンが待機時の収入が一番低い理由
待機費用は自己負担
賞与が減るパターンの場合月給が変わらないため安心して生活が送れるように思えますが実は一番待機リスクが高いです。前項の表を見てわかる通り正社員にもかかわらず待機になると有期雇用(給与0円パターン)より収入が減っています。原因は待機時の費用を社員が負担する点です。
上の表は賞与が減るパターンの月ごとの収支になります。還元率70%のうち12%(単価60万で7.2万)を毎月賞与用として積み立て年度末に支払うようにしています。注目すべきは待機となった11、12月です。
待機のときその月の月給と会社負担分の社保を賞与から減らすため賞与積立金が-39.7万(月給34.8万+社保4.9万)となっています。このため1か月待機のとき賞与は39.5万まで減ってしまいました。2か月待機の場合は賞与積立金:72万に対して、控除額が79.4万と賞与積立金の合計がマイナスとなってしまいました。社員に損失を支払ってもらうことはできませんので賞与は0円となります。
会社の利益を優先
月給が減るパターンと賞与が減るパターンの会社の粗利益(売上-人件費)を比較します。
月給が減るパターンは月給こそ減りますが費用は会社持ちです。そのため会社は待機時は売上がないにもかかわらず、月給+会社負担の社保の支払いがあるため利益は大きく下がっています。
賞与が減るパターンの場合待機時の費用を会社でなく社員が実質負担しているため会社の利益はそれほど減っていません。
賞与が減るパターンというのは会社の利益を極力減らさないための仕組みであるということです。
賞与がダメというわけではない
賞与ありが全部だめなのでなく還元率に賞与が含まれていることで問題が発生します。
ダメなケース:月給:単価×0.58、賞与:単価×0.12
良いケース: 月給:単価×0.7+賞与
どちらも還元率は70%ですが、良いケースでは賞与が加点方式、つまり追加で報酬が支払われます。それに対しダメなケースは減点方式になっています。待機など損失が発生した際にそれを穴埋めするために賞与が利用されることになります。
基本的に単価連動で賞与を設定するメリットはエンジニア側にはありません。単価連動で賞与がある場合それがどのようにして計算されているかを確認すべきです。
まとめ
パターン | メリット | デメリット |
---|---|---|
月給が減る | ・待機時の月給は会社負担 | ・収入が変動する |
賞与が減る | ・毎月の収入が一定 | ・待機時の月給は実質自己負担(待機月の月給+社保を賞与から減らす) |
還元率だけ考えればフリーランスが最も高くなります。あえて高還元SESに転職する理由の1つが待機時の収入があるという点です。
私がおすすめするのは月給が減るパターンです。確かに待機になれば収入は大幅に減りますが最低額は法的に保証され、費用は会社持ちです。また賞与用に積立しないため月給が高くなり、病気やケガした時の傷病手当や離職時の失業手当の金額が高くなります。
一方おすすめできないのが賞与が減るパターンです。正社員にもかかわらずほぼ有期雇用です。違うのは有期雇用は待機が長引けばその間の収入は0円ですが、賞与が減るパターンは賞与積立金が0円になった以降の月給は会社負担となる点です。賞与0円と引き換えに月給を保証してもらう感じですね。
自分が経営者であれば賞与が減るパターンで働いてくれる社員はとてもありがたい存在です。正社員でありながら有期雇用並みの待遇で働いていてくれるのでリスクを抑え安定した経営が可能となるためです。
月給保証制度で待機になっても月給の変動がないとする一方で賞与から待機費用を全額引くという仕組みであれば全く保証の意味がありません。ゆえに高還元SESに転職する際は収入をトータルで考えることが重要になります。見た目の保証にだまされず待機になった時にどうなるか一度計算してみましょう。
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