最近転職サイト除くと”単価の○○%を還元”をうたっているSESが増えてますね。
高還元SESや新SESと呼ばれていますが、みなさんはどう感じますか?
私は仕組みをよく理解せずに転職し失敗した口です。
これから高還元SESに転職しようと考えている人たちの参考になるよう、以前勤めていた高還元SESの待遇について紹介したいと思います。
※特に記載なければ、以降高還元SESは前職の高還元SESのことを指します
”給与還元率70%!”、実際は60%程度
前職高還元SESの求人には大きく”業界最高水準の給与還元率70%!”と書かれていましたが、実際は単価の60%を程度の収入でした。
この還元率には実にいろいろなものがくわえられ、水増しされた結果が還元率70%でした。
ではその内訳をみていきましょう
会社負担分の社会保険料+交通費を含む
還元率には”会社負担分の社会保険料”と”交通費”が含まれていました
私の場合は、
会社負担分の社会保険料:約10%
交通費:約2%(12,000円)
70 – ( 10 + 2 ) = 還元率58%
が正しい還元率になります。
前職が年収400万だったので、ボーダーラインを400万に設定していました。
単価50万あれば年収420万になるので特に問題ないだろうと考えていましたが。。。実際は350万です。
還元率には賞与を含む
単価に還元率をかけたものがそのまま月給として支払われるのではなく月給と賞与に分けて給与が支払われていました。
割合は月給が約50%、賞与が約8%。賞与は大体月給の1.5~2ヶ月といった感じです。
一般的な求人票に合わすなら月給:単価×50%+賞与ということになります。還元率70%からずいぶん離れてきましたね
賞与を支給するというのが大事なポイントです。覚えておきましょう
ちなみに賞与積立と書いてありますが明細書に項目があるわけでなく、裏で会社がプールしているものです。隠れパラメータですね。
賞与をもらうまで実際の還元率はわからない
公表している還元率が70%で月給が単価の50%の時点でおかしいと思っても、
「賞与で補填するよ!」
と言われると、なかなかそれ以上追及はしにくく、結局還元率に会社分の社保+交通費が含まれていることが発覚するのは賞与をもらったタイミングになります。
業界最高水準の還元率は派遣平均より低い
還元率が低くても年収が高ければ問題はありませんが、還元率を水増しするような会社です。そうは問屋が卸しません
”派遣の平均マージンよりうちは10%以上も還元しています!!”
前職の高還元SESは、求人、ブログで上のような文句で還元率が高いことをめちゃくちゃアピールしてました。
派遣会社ってマージン率の公開が義務付けられていて厚生労働省が「労働者派遣事業の事業報告」で平均マージン率を発表しています。
情報系の派遣の平均マージン率はおよそ40%(=還元率60%)になります。
この数字より10%高いとうたっていましたが、実際は還元率が70%→58%と減少したことで”業界最高水準”どころか、平均を下回っています。
紹介される単価も基本的に下回ってましたね。仲介挟んでいたのが原因でしょう
交通費支給、ただし賞与で減らす
大体の会社で一般的な福利厚生である通勤手当ですね
高還元SESでも毎月全額交通費支給してくれます。
ただし支給した分、賞与から全額減額されました。
交通費ありの場合賞与積立が減ってますね。高還元SESでは毎月還元の一部を賞与支払い用に積み立てています。そこから交通費を捻出しているということです。
総額は変わりません。つまりは実質自腹です。会社はびた一文支払いません。
私の場合、交通費12,000円だったので年収は約15万ダウンとなります。意外と馬鹿にできない数字です。もともと低い還元率に、交通費も自腹なので最悪です。
客先常駐という性質上、いつも客先が徒歩圏内とは限りません。交通費が発生する現場はでてきます。高還元SESに転職予定の人は良く確認しましょう
。。。と言いたいですが、福利厚生に交通費全額支給と書いてあって、実態は自腹というのは常識が邪魔して見抜くほうが難しいです。
待機時の月給は100%支給、ただし賞与で減らす
SESの中には待機中は通常の6割支給になる会社もあるそうです。
高還元SESでは固定給で、待機になっても毎月同じ額が振り込まれました。ただし、待機中にかかるコストは全て賞与から減額する仕組みでした。
コスト、つまり待機中の
・給与
・会社負担分の社会保険料
が賞与から差し引かれます。
これに加え待機中は賞与積立もなくなるので待機なく働いたときに比べ年収が-42万減ることになります。
賞与と呼んでいますが実態は待機補填金です。毎月社員から還元分から徴収し、待機にならなければ返金を行っているということです。
会社としてありがたいのは待機中のコストを気にする必要がなく、その分還元率を上げることができます。
また待機のあった年は年収自体はガクンと下がりますが、売上も減っているので還元率は70%のままとなります。
会社としてはいいことだらけの仕組みです。
残業代はない
”みなし残業でしょ。知ってるよ”
と思った方もいるかもしれません。実際みなし残業も30時間ありました。問題はみなし残業を超えたときの残業代です。
残業代は出るが、賞与で減らす
おなじみのキーワードがまた出ました。
残業が40hなので、みなし残業30hを引いた10h分の残業代が加算されます。ただし精算幅の上限180hを超えていないのでこの月の請求額は60万のままです。
このままでは会社の取り分が残業代だけ減ってしまいます。
そこで支払った残業代は賞与積立から減額して、会社の取り分が減らないように調整が入ります。
上の例だと毎月通常であれば6万の賞与積立がありますが、今回は残業代の支給があったのでその分をそのまま減額します。
残業代に限らず、休日出勤の割増賃金等も同様に単価が変わらなければ賞与が減る仕組みです。
通常の業務では全く収入は増えないのかというわけでなく、例外があります。
精算幅の上限180hを超えたとき自社は客先に追加費用を請求できます。この追加費用の60%が賞与に加算されます。ただ40%は当然のように会社がとっていきます。
もらうものはもらうが、不要な支払いは行わないというスタンスです。
“残業代は総支給より算出しており、同業他社より高い”という触れ込みでした。が結局のところ残業代をいくらにしようが賞与で減額するので会社の負担は0ということです。
支払われない賞与
いろいろ会社のために活用される賞与君ですが、賞与そのものも支払われないケースも存在します。
退職時の賞与
賞与を受け取る日に在籍していないと賞与は支払われません。
一般的な企業では当たり前の話ですが、高還元SESは単価に連動した報酬なので賞与は社員の取り分なので退職時期に関係なく支払うのが当たり前と考えるのが普通だと思います。
当然ですが支払われると思っていたものが支払われないと社員ともめることもあり得ます。
この辺もきっちり対策済みで、就業規則に”業績により支払うことがある”とします。
就業規則に賞与の支払いが明確に書かれていなければ会社に支払い義務はありません
契約期間と賞与支給日をずらす
SES契約では3か月更新、つまり4~6月、7~9月、10~12月、1~3月の期間ごとに契約を結ぶことが多いです。
そこで賞与算定月をずらすことで会社は損失を減らすことができます
仮に賞与をもらって12月に退職を行う場合、契約最終月の12月分の賞与積立が残っている状態です。これは来年分の賞与となるので支払いはありません。
また12月でなく有給を取得して1月退職となった場合、1月分の給与が発生します。こういったケースも若干ですが会社の支払いが賞与積立により減少します。
マイナスがある評価制度
単価で給与が決まる公平な評価が売りなはずなのに、なぜか賞与に評価制度がありました。
会社への貢献度によって決まるとされていましたが、明確な基準はありませんでした。
評価制度があるのは別にいいですが、恣意的な評価の排除からできたのが単価連動の制度なので減額の評価があるのはいただけません
売上に沿った給与はそのまま支払う、そのうえで貢献度によってプラスするというのが単価連動の評価としては妥当だと思います。
還元率に含めている賞与をよくわからない評価で下げることができる仕組みは、ある意味会社に逆らえないようにしていると邪推してしまいます
まとめ
還元率が給与のみの割合でない、待機時給与保証や交通費全額支給なのに実際は賞与から減額する仕組みなど求人の内容と実態がかなり違う印象を持ちました。
高還元SESはフリーランスと会社員のいいとこどりと書いてあることが良くあります。その根拠は従来のSESより高い還元率に、普通の会社員と同じように毎月安定的な収入があることです。
ただし中には還元率の一部を賞与に割り当て、待機になったらそこから補填する高還元SESが存在します。
これは身分は会社員ですが、給与体系はフリーランスと同じになります。フリーランスであれば毎月一括で支払われるところを、月給と賞与に分割しているだけです。
毎月安定的な収入を得ているように見えますが、待機時の収入は0円です。
実態はフリーランスにもかかわらず手数料は20~30%(還元率:70~80%)なので、還元率もいいとは言い切れないのが現状です。
フリーランスはちょっと。。。と思って高還元SESに転職を考えている人は、とにもかくにも待機時の給与は実質だれが負担しているかということをよく確認すること。会社負担でなければその会社はやめておきましょう
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