待機条件の賞与を減らすパターンで出てきた粗利率【1-(給与+社会保険料+交通費)÷売上】とはどういうものか解説していきたいと思います。
※高還元SESは前職の高還元SESのことをもとに記載しています
粗利率から賞与を決める
高還元SESは粗利率から賞与を決めます。粗利率からどうやって賞与を求めるのかと聞くと、粗利率を求めてそこから会社の利益を引いてそこに年間売り上げをかける、のように面倒な手続きを経て賞与を求めるような説明をされました。
これだけ聞くと?なのでわかりやすく式を書くと
賞与=売上-(給与+社会保険料+交通費+会社の取り分)
となります。
還元率70%と書かれているとまず社員の給与を70%にして残りを会社が受け取っているように考えますが、実際は逆で会社の取り分を最初に20%と決めています。ここから必須の雇用コストである社保を引き、残りの割合を月給と賞与に分割していきます。
コストは社員負担
上の例で行くと会社の取り分、社保の割合は売上の20%と固定です。残り70%を月給、賞与、交通費に割り振っていることがわかります。
ここで交通費が発生した場合と交通費がかからなかった場合の賞与を比較してみます。
単価60万、還元率70%のときの賞与
60-(36+6+0+(60×20%))=6万
6万×12か月=賞与72万
単価60万、還元率70%、交通費1万円のときの賞与
60-(36+6+1+(60×20%))=5万
5万×12か月=賞与60万
どうでしょうか?交通費がかかった分だけ賞与が減りましたね。それに対し会社の取り分は変わりませんでした。
ようするに粗利率から賞与を求めるとは、会社の利益率は変わらず、追加コストが発生すればそれをエンジニアが負担する仕組みであることがわかります。
追加コストというのは交通費、待機費用、残業代、社会保険料(会社負担分)等々ですね。
普通の会社であれば例えば交通費が発生したら会社の取り分が減りますが、この粗利率の計算式から賞与を求める会社は、交通費をいったん支払いあとで賞与で回収していることになります。つまりは会社は交通費の負担が実質0円ということになります。
求人等に粗利率の計算式が載っていることがありますが「会社の取り分」は意図的かはわかりませんが記載がない場合が多いです。もしかしたらエンジニアに不利な計算であることが分からなくするためかもしれません。「粗利率」という文字には要注意です。
さて、その他の費用負担がどうなるかについてもみていきましょう。
社員が負担するコスト
待機費用は自己負担
待機のときの賞与(単価0万、還元率70%)
0-(36+6+0+(0×20%))=-42万
6万×11か月-42万=賞与24万
待機になっても正社員で雇っているため月給と社会保険料の支払いが発生します。計算式に当てはめると売上0円に対し、給与と社会保険料を差し引くことになるので待機月の賞与がマイナスになります。
待機費用が賞与から減額される=待機費用はエンジニア持ちだということがわかります。「待機中でも月額保証」と書かれていても実のところ待機費用をエンジニア側が負担しているわけです。
残業代は自己負担
単価60万、還元率70%、残業代1万のときの賞与
60-(37+6+0+(60×20%))=5万
5万×12か月=賞与60万
残業代が発生した場合はどうでしょうか?みなし残業を超えて残業をすると残業代が発生し月給は上がりますが、精算幅を超えていなければ売上(単価)は変わりません。そうなると残業代の分だけ賞与が減ります。トータルで見ると会社は残業代を負担していないことがわかります。
交通費は自己負担
単価60万、還元率70%、交通費1万のときの賞与
60-(36+6+1+(60×20%))=5万
5万×12か月=賞与60万
求人に「交通費全額支給」と書いてあっても粗利率の計算に交通費が含まれていると、交通費は自己負担となります。
”会社負担分”の社会保険料も自己負担
保険料率が1万アップした場合の賞与(単価60万、還元率70%)
60-(36+7+0+(60×20%))=5万
5万×12か月=賞与60万
社会保険料は会社と社員で折半します。粗利率の計算式に書かれている社会保険料とは会社負担分のものです。
会社負担分となっているので本来会社の利益から支払うことになりますが、粗利率の計算に社会保険料が含まれていると値上げ分だけ社員の賞与が減ることになります。
また社員は社員負担分の社会保険料があります。会社負担分が1万上がればこれと同額が給与(賞与)が減ります。会社負担分で給与(賞与)が-1万、社員負担分で手取りが-1万となります。つまり普通の会社にくらべ負担が2倍ということになります。
会社だけの負担金も自己負担
・厚生年金保険
・健康保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
・子ども子育て拠出金
・子育て支援金(2026年~)
これらを総じて社会保険料といい、このうち労災保険、子ども子育て拠出金は会社負担のみで従業員の支払いはありません。
これらが粗利率の計算式に組み込まれていると本来負担しないものまで実質的に社員が負担することになります。
あえて計算式を書く理由
言い訳に使う
「待機中の給与全額支給」「交通費全額支給」と求人に書いておいて実は費用を賞与から引くとなれば会社側は非難されることが必至です。そこで求人に”賞与は粗利率【1-(給与+社会保険料+交通費)÷売上】から決定します”と書いておきます。
こうすることによって待機費用が実質エンジニア負担になっていることを突っ込まれても、
「求人にしっかり計算式を公開しており、十分説明できていると思っていた。費用がエンジニア負担になることを隠す意図はなかった」
と弁明することが可能です。社員が計算式を理解していないことを非難しつつ、情報をオープンにしている点をアピールします。ばれても言い訳できるよう対策しているわけですね。
隠す意図がなければ粗利率の計算式でなくきちんと日本語で賞与から差し引く旨を明記すればいいのです(もしくは待機時月給保障や交通費支給を書かないとか)。
×賞与は粗利率【1-(給与+社会保険料+交通費)÷売上】から決定します 〇待機時の月給、交通費は賞与から差し引きます
まとめ
粗利率【1-(給与+社会保険料+交通費)÷売上】から賞与を求めるメリット
会社のメリット | 社員のメリット |
---|---|
・待機費用が抑えられる ・残業代が実質0円 ・交通費が実質0円 ・社会保険料で利益が左右されない | なし |
社員のメリットをがんばってひねり出そうしましたが全く浮かびませんでした。たぶんメリットはありません。
待機時の月額保証、交通費全額支給など求人に一見お得と思える制度が書かれていてもこれらを台無しにするのが粗利率から賞与を求めるという文言です。高還元SESへの転職を考えている方は粗利率という文字に注意を払っていただきたい。個人的に転職はおすすめしません。
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