SESでよくある“請求方式”の勘違いまとめ

SESに関する誤解の中でも、とくに多く見られるのが 「契約形態ごとに請求方式が決まっている」 という思い込みです。

SNSではよく

  • 「準委任=時間請求でしょ」
  • 「請負は成果物請求じゃないと違法」
  • 「派遣は時給制」

といった声を見かけますが、
これらはすべて 法律ではなく“商習慣のイメージ” による誤解です。

しかし、実際には 請求方式は契約の設計次第 であり、
準委任・請負・派遣のどれでも 幅広い精算モデル を選ぶことができます。

この記事では、
まず「精算方式の種類」をわかりやすく整理し、
次に「契約形態との相性」や「使われやすい理由」を説明していきます。

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精算モデル(SESで使われる代表的な4つの方式)

まず全体像として、SESでよく使用される4つの精算方式を整理します。


精算幅精算

例:140〜180hで60万円

  • 時間が範囲内 → 月額固定
  • 下回り → 減額
  • 超過 → 追加請求
  • SESで最も一般的

実態を見ながら柔軟に運用できるため、
派遣・準委任のどちらでもよく使われます。


月額固定

稼働時間に関係なく、毎月同額を支払う方式。

  • 精算幅がないため明瞭
  • 管理がシンプル

“稼働時間の管理コストを小さくしたい” 場合に選ばれます。


成果完成型

成果物が完成したタイミングで支払う方式。

  • 最も請負らしい精算方式
  • 完成に対して報酬を支払う構造
  • 中〜大規模の開発で使われやすい

契約当事者が「成果物」を基準に合意しやすいときに選ばれます。


履行割合型

プロジェクト進捗に応じて分割して支払う方式。

  • 30%完了 → 30%支払い
  • 80%完了 → 80%支払い
  • 100% → 全額

長期案件や成果物が単純に一括で測れないときに使われます。


この精算方式はどの契約(準委任・請負・派遣)で使われる?

請求方式は「契約形態」とは独立しているため、
どの契約でも基本的には自由に選ぶことができます。

派遣

  • 精算幅精算
  • 時間ベース(労働時間の提供が前提)

準委任

  • 精算幅精算(最も多い)
  • 月額固定
  • 成果物払い(法律上は可能)
  • 履行割合型(稀だが可能)

請負

  • 成果完成型(最も多い)
  • 履行割合型
  • 時間精算(可能だが注意が必要※後述)

契約形態の本質(準委任と請負の「責任範囲」の違い)

請求方式を理解するうえで重要なのは、
契約形態の違いは「請求方式」ではなく 責任範囲の違い だという点です。


準委任の責任範囲

準委任の責任は 業務を適切に遂行すること にあります。

  • 成果物が完成しなくても違反ではない
  • 善管注意義務を果たしていればOK
  • プロセスが価値になる業務向き

準委任に向く業務例

  • 調査・分析
  • 運用・保守
  • 上流工程の支援
  • 要件が頻繁に変わる業務
  • 労働量(作業時間)が価値になる業務

請負の責任範囲

請負の責任は 成果物の完成 にあります。

  • 完成しなければ報酬請求できない
  • 瑕疵があれば責任を負う
  • ゴールが明確な業務向き

請負に向く業務例

  • アプリ・システム開発
  • Web制作
  • ドキュメント納品
  • 一式の開発案件
  • 完成に価値がある業務全般

なぜ「準委任=時間精算」が多いのか

準委任 × 成果物払いは法律上可能ですが、実務ではあまり採用されません。

理由は、
「完成義務がない契約」と「成果物払い」は性質的に合わないからです。

準委任で時間精算が多い背景は以下の通り:

  • プロセスや業務遂行そのものが価値
  • 成果物が不確定で設計しづらい
  • 要件・仕様が変わりやすい
  • コスト見積もりがしやすい
  • 双方のリスクが小さい
  • エンジニアが常駐しやすく管理しやすい

結果として、

準委任=時間精算が“最も扱いやすい”

という構造が生まれています。


なぜ「請負=成果完成型」が多いのか

請負は成果物完成に責任を負う契約なので、
最も整合的な請求方式は 成果完成型 です。

これが選ばれやすい理由:

  • 責任範囲と報酬方式が一致する
  • 成果物基準で契約内容が明確
  • 工程管理を請負側が主導できる
  • 収益性・採算管理がしやすい
  • 発注者にとっても分かりやすい(完成=支払う)

そのため実務でも、
請負=成果もしくは履行割合
という構造になっています。


請負で時間精算を使う場合の注意点(偽装請負のリスク)

請負 × 時間精算 は 合法 ですが、慎重に扱う必要があります。

理由は、
“時間に対価を払う”構造が労働力提供に見えやすい ためです。

特に以下がそろうと、偽装請負と判断されやすくなります。

  • 客先が直接指示命令している
  • 客先チームに組み込まれて作業している
  • 工程管理が客先主導
  • 成果物より時間が重視されている
  • 常駐で働き方が派遣に近い

請負では、

  • 完了条件
  • 成果物範囲
  • 指揮命令の所在
  • 工程管理の主導権

を明確にして運用することが重要です。


まとめ

SESの請求方式で誤解されやすいポイントは次の通りです。

  • 請求方式は契約形態ではなく“契約設計”で決まる
  • 準委任と請負の違いは請求方式ではなく“責任範囲”
  • 準委任はプロセスが価値 → 時間精算が使われやすい
  • 請負は成果物がゴール → 成果完成型が使われやすい
  • 請求方式はどの契約でも自由に設定可能
  • 請負×時間精算は偽装請負リスクに注意

実務の現場では 「準委任=時間精算」 の理解で
ほとんど困りません。
SES業界では時間精算が一般的で、日々の運用は成立してしまいます。

ただ、今回説明した背景を理解しておくと、

  • 契約の意図が読み取れるようになる
  • 不利な精算方式を避けられる
  • 偽装請負などの“落とし穴”に気づきやすくなる
  • SNSの議論で何がズレているか判断できる
  • 他社のビジネスモデルを分析しやすくなる

といった メリット があります。

つまり、

「知らなくても困らないけれど、知っていると役に立つ」かも...
という立ち位置です。

必要な部分だけ取り入れてもらえればいいかなと思います。

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