高還元SESを辞めない心理を読み解く

人は「得をする」よりも「損をしない」ことを優先して行動します。 これは心理学で“損失回避”と呼ばれる現象。 高還元SESで「思っていたより還元率が低かった」と気づいても辞めない人が多いのは、 実はこの人間の根本的な心理が働いているからです。 この記事では、「なぜ辞めないのか？」を“損失回避の視点”から掘り下げていきます。

人間は「得をする」より「損をしない」ことを優先する生き物

高還元SESに入社してしばらく経った頃。 「還元率に会社負担の社会保険料も含まれている」と気づき、思わずがっかりする──そんな声をよく耳にします。 数字のマジックに気づいた瞬間、誰もが「損したかも」と感じるもの。 でも実際には、それでも辞めない人が多数派です。 その理由は、単に「慣れ」ではなく、人間の根本的な心理構造にあります。

---

① 人は“得をする”より、“損をしない”ことを選ぶ

心理学では「プロスペクト理論」と呼ばれます。 人間は、得をする喜びよりも、損をする痛みを約2倍以上強く感じる生き物です。 たとえ冷静に考えれば「他社に移ったほうが少し年収が上がる」と分かっても、 「転職して失敗したらどうしよう」という不安が勝ちます。 この“損失回避の心理”こそが、高還元SESを辞めない最大の理由です。 制度への不満よりも、今の安定を失う恐怖のほうがずっと大きいのです。

② 損しているとわかっても、“行動コスト”が高い

「還元率が少し低いだけ」と思っても、その差は意外と大きいものです。 たとえば単価60万円で比較すると── 還元率65％と70％では、月収で約3万円、年収ベースでは40万円近い差になります。 数字だけ見れば、転職したほうが明らかに得です。

しかし、転職には案件探し、面談、現場の切り替えなどの“行動コスト”が伴います。 多くの人は「この40万円のために今の安定を壊すのか？」と考え、 結局は“損を取り戻すより、損を拡大しないほう”を選びがちです。 人は合理的な判断よりも、安心できる現状を優先する傾向があります。

③ SES業界では“損得の境界線”が曖昧だから

SES業界では、単価・交通費・賞与・待機保証など、各社で計算方法がまったく異なります。 つまり、「自分が損している」と思っても、比較対象が不明確なのです。 実際、

• 還元率に社会保険料を含める会社
• 賞与で調整する会社
• 待機保証を設けて心理的安心を売る会社

どれも一長一短。 だから人は、「他に行ってもどうせ同じ」と感じ、損失リスクを避けて留まるほうを選びます。

④ 現場の安定は、“損を防ぐ最大の保険”

SESで働くエンジニアにとって、最大のリスクは「案件がなくなること」。 今の現場が安定しているなら、それはすでに損失を避けている状態です。 「制度に不満がある」より「案件が継続している」ことのほうが、はるかに大きな価値を持ちます。 現場の安定は、言い換えれば“損を防ぐ最強の防波堤”。 だからこそ、多くの人が制度の細部よりも「現場が続く安心」を優先して残ります。

⑤ “裏切られた”よりも、“居心地の損失”を避けたい

人間関係が悪くない、リモートもできる、生活リズムが整っている── そうした“環境の安定”は、給与の1〜2万円の差よりも重く感じるものです。 仮に制度に納得いかなくても、 「ここで働くのが気楽」「案件先が悪くない」 という日常の快適さが損なわれるリスクを避けたい。 それが、“裏切られても辞めない”という現実の裏にある心理です。

---

まとめ

人は合理的ではなく、損失回避的に動く

人は常に合理的に判断していると思われがちですが、実際には「損をしないために行動を選ぶ」傾向が圧倒的に強い。 高還元SESで還元率の真実に気づいても辞めない人が多いのは、この損失回避バイアスが働いているからです。 「失敗したくない」「今の安定を壊したくない」という気持ちは自然なことです。 しかし、SESという仕組みの中では、動かないこと自体が損につながるケースも多いのです。

同じ仕事なら「より高く還元される会社」を選ぶべき

SESでは、給与は「単価×還元率」で決まります。 単価が同じであれば、還元率が高い会社に転職したほうが確実に収入は増えます。 たとえば単価60万円なら、還元率65％と70％の差で月3万円、年収で40万円近い差が出ます。 同じ現場、同じ仕事内容であっても、会社の取り分が違うだけでこれほど差が生まれるのです。

さらに、仲介会社を挟むほどマージンが重なり、エンジニアに届く単価は下がります。 一方、自社で直接営業を行っている高還元SES企業なら、仲介を通さない分だけ単価も高く、還元率も維持しやすい。 誰が案件を取ってきているかという営業構造こそ、あなたの年収を左右する重要なポイントです。

損を恐れず、「動く勇気」を持とう

人は損を恐れるあまり、行動を後回しにしがちです。 けれど、その“恐れ”を少しだけ乗り越えれば、努力やスキルをより正当に評価してくれる環境に出会うことができます。 SESの現場はどの会社でも似ています。変わるのは「会社の取り分」と「あなたの取り分」だけ。 ならば、より多くをあなたに還元してくれる会社を選ぶのが、最も合理的な選択です。

転職はたしかにエネルギーを使う行動です。 ですが、その一歩を踏み出すことで、長期的には“損しない”どころか確実に得をする未来を手にできます。 今の安定にとどまることも選択ですが、 「自分の価値をもっと正当に評価してもらいたい」と感じたなら、 ぜひ勇気をもって動く側になってください。 あなたのキャリアは、あなた自身の選択で変えられます。